蜂の子とイナゴは何が違うのか?

長野県など山間部の郷土料理として有名な食材に、蜂の子とイナゴがあります。どちらも瓶詰や缶詰などの佃煮が流通しており、珍味として知られています。今回は、蜂の子とイナゴの違いについて解説します。

蜂の子とは

蜂の子は、蜂の幼虫やサナギのことで、名前の通り蜂の子供です。蜂の子として食べられている蜂の種類には、クロスズメバチ、オオスズメバチ、ミツバチ、アシナガバチなどが挙げられます。現在の日本では、長野県・岐阜県・愛知県・静岡県・山梨県・栃木県・岡山県・宮崎県などの山間部を中心に食べられています。流通が未発達で魚などのタンパク源が不足していた時代には、貴重なタンパク源として、これら以外の地域でも一般的に食べられていました。

イナゴとは

イナゴは、バッタ亜目・イナゴ科に分類されるバッタ類の総称です。稲を食べる害虫であると同時に、水田から採れる重要なタンパク源として多くの地域で食べられてきました。現在の日本においては、昆虫食は一部地域を除いて一般的ではありませんが、イナゴはかつて全国的に食用とする風習がありました。農薬の使用により、近年では食料として扱われることは減りましたが、長野県など一部地域の郷土料理としてイナゴの食習慣が残っています。

蜂の子とイナゴの成分

蜂の子の成分

蜂の子には、19種類のアミノ酸、8種類のビタミン、8種類のミネラル、8種類の脂肪酸からなる豊富な栄養素が含まれており、健康食品として有名です。蜂の子は古くから貴重なタンパク源とされ、特にタンパク質を構成するアミノ酸が豊富です。人体を構成するアミノ酸のうち、人が身体で生成できず食品から摂取する必要のあるアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸は9種類あり、蜂の子にはすべての必須アミノ酸が含まれています。
蜂の子に含まれる成分には、耳鳴りの予防・改善やストレス軽減効果など多くの滋養強壮効果があるとされ、大学病院による複数の研究でもその効果が確認されています。

イナゴの成分

蜂の子と同じく、イナゴもタンパク質が豊富です。文部科学省の食品成分データベースによれば、イナゴの佃煮100gあたりに含まれるタンパク質は26.3gで、蜂の子の佃煮の16.2gを上回ります。イナゴに含まれる成分の分析や研究はあまり行われていませんが、蜂の子などほかの昆虫食と同じく、イナゴにもタンパク質やミネラルが豊富に含まれているため、健康増進効果が期待できます。
イナゴに含まれるタンパク質以外の主な成分には、炭水化物・ビタミンE・ビタミンB2・鉄・亜鉛・銅・マンガンが挙げられます。ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、増えすぎた活性酸素を中和して細胞の老化を予防する効果があります。ビタミンB2はエネルギーの代謝に不可欠で、生活習慣病の予防に役立ちます。鉄・亜鉛などのミネラルは、血液を構成する赤血球の生成に不可欠で、身体の様々な機能に関わる酵素の生成にも必須です。

蜂の子とイナゴの調理

蜂の子とイナゴの調理方法としては、両者とも佃煮が有名です。醤油、砂糖、水あめなどで味付けされ、瓶詰や缶詰でも流通・販売されています。

蜂の子の調理

蜂の子は、蜂の巣ごと採取されます。蜂の子は巣の小部屋の中に一匹ずつ入っており、これをピンセットなどで取り出して、流水などで付着物を洗い流してから調理します。蜂の幼虫には黒い内臓部分があり、内臓部分は苦味などの味のクセや食感の悪さを生むため、取り除いた方が美味しく食べられます。
蜂の子の料理は佃煮が有名ですが、唐揚げ、バター炒め、甘露煮、炊き込み御飯なども一般的です。蜂の子は淡白で上品な味をしており、ほのかな肉の甘みがあります。

イナゴの調理

イナゴを調理する場合、まず秋に水田などで大量に発生するイナゴを採取して、数日の間、箱などに入れて絶食状態で放置します。これはイナゴの体内にある糞を外に出すためです。この処理を行った後、必要に応じて後ろ足や羽を取り除き、水洗いしたあと調理します。
イナゴも蜂の子と同じく、主に佃煮にして食べられるほか、唐揚げや、火で炒って塩を振るなどの調理法でも食べられています。味や食感は小エビによく例えられ、ほどよい歯ざわりと香ばしい風味があります。
和歌山県では、大豆の代わりにイナゴを使った醤油風調味料も開発されています。

蜂の子とイナゴの健康利用

蜂の子の健康利用

蜂の子は古くから滋養強壮効果があるとされ、古代中国では薬としても使用されていました。蜂の子は特に耳鳴りの予防・改善に効果があることが知られており、複数の大学病院の研究でも、その高い効果が確認されています。
耳鳴り症状の改善のほかにも、蜂の子成分には体力増加、ストレス軽減、血行促進など多くの健康効果があります。サプリメントの材料としても使用されており、数多くの製品が販売されています。
蜂の子に含まれるアミノ酸やビタミンには美しい肌や髪の形成に役立つ成分もあるため、蜂の子を使った化粧水などの美容製品も販売されています。

イナゴの健康利用

イナゴは漢方薬や民間療法の薬として利用されてきた歴史があり、咳やひきつけを止める効果があるとされています。子供のひきつけに強火で焼いたものを粉末にして飲ませるほか、百日咳に対して煎じて使用します。焼いて粉末にしたものを油に混ぜて、しもやけになった皮膚に塗るといった使用法もあります。
長野県阿智村などでは、イナゴの黒焼きを粉末にして油と混ぜた湿疹治療薬や、扁桃腺にイナゴの黒焼きの粉末を吹き付けるなどの民間療法も存在していました。
古代アラビア人はマラリアや肺結核の治療にイナゴを使用し、古代ヨーロッパではハンセン病、結石などの治療に用いたともいわれています。

まとめ

蜂の子は蜂の幼虫やサナギで、イナゴは水田で発生するバッタの仲間の総称です。両者とも古くから貴重なタンパク源として日本各地で食されてきました。現在でも珍味として有名で、缶詰や瓶詰の佃煮が流通・販売されています。
蜂の子には多くの滋養強壮効果があるとされ、蜂の子のサプリメントや美容製品も数多く販売されています。イナゴには多くのタンパク質やミネラルが含まれ、漢方や民間療法で薬として利用されてきた歴史があります。
昆虫は低脂肪・高タンパクの食品として注目され、身体に欠かせないアミノ酸やミネラルが豊富に含まれています。健康増進のために、そして日本伝統の食文化を体験するために、いちど蜂の子とイナゴを食べてみることをお勧めします。

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