蜂の子とは何か

滋養強壮に効果的な健康食品として有名な「蜂の子」。そもそも蜂の子とは何のことで、どんな種類があるのでしょうか。蜂の子が人と関わってきた歴史や、蜂の子に含まれる成分、気になる健康効果についても解説します。

蜂の子とは

蜂の子とは、名前の通り蜂の子供で、蜂の幼虫やサナギのことです。ミツバチやスズメバチなど、すべての種類の蜂の子供が蜂の子と呼ばれます。
現在一般的に食べられている蜂の子のうち、一番多いのがクロスズメバチの子供です。他にもオオスズメバチ、ミツバチの蜂の子がよく食べられています。キイロスズメバチ、アシナガバチなどの蜂の子が食用になることもあります。
通常、蜂は自然界に巣を作っており、蜂の子は巣ごと採取されます。蜂の子は、蜂の巣の小部屋に一匹ずつ入っていて、一つの巣に成長段階の異なる個体が混ざって存在しています。そのため、蜂の子には幼虫、幼虫からサナギになる前の前蛹、サナギ、成虫になる直前の個体といった様々な種類の蜂の子供が含まれます。
人類と蜂の子の関係はとても古くから続いており、古代から貴重な食料や薬として人々の暮らしに役立ってきました。

蜂の子の歴史

食料としての歴史

人と蜂の子の関わりは非常に古く、人類が洞窟に住んでいた頃から、蜂の子は食料として利用されていました。世界各地にある遺跡から人糞の化石が発見され、その中から蜂などの昆虫を食べていた痕跡が見つかっています。一番古い例では、150万年前の東アフリカで蜂の子が食べられていたことが分かっています。
蜂の子を食用にする習慣は世界各地の食文化として根付いており、ルーマニア、タイ、メキシコ、エクアドルなどでは古くから貴重な食材として食べられてきました。現在でもこれらの地域において、蜂の子は一般的な食材です。
日本でも、古代から蜂の子が食用とされていたと考えられており、江戸時代の文献にも、山間部を中心に食べられていたことが記されています。1919年には、日本で昆虫食に関する大規模な調査が行われ、クロスズメバチやスズメバチの蜂の子が全国的に食用とされていたことが明らかになっています。
昭和以降の経済発展や冷蔵技術の向上で日本の食文化が大きく変わり、蜂の子は以前ほど一般的な食材ではなくなりました。しかし、岐阜県や長野県など山間部を中心に蜂の子を食べる食文化は根強く残っており、伝統的な郷土料理として親しまれています。

薬としての歴史

蜂の子は、食料としてだけでなく、薬としても利用されてきました。
約2000年前に記された中国最古の薬学書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』にも、蜂の子についての記述があります。この中で蜂の子は最高ランクの薬とされ、頭痛改善・内臓不良改善・老化防止・美肌などに効果があるとされています。
中国の明時代の薬学書『本草綱目』でも蜂の子は優れた薬とされ、『神農本草経』の効能に加えて、黄疸・皮膚の感染症・便秘・風疹・婦人病などに効果的と記されています。
蜂の子は日本でも漢方薬として利用されてきました。蜂の子には耳鳴りを改善する効果があることが、大学病院の研究でも確認されています。漢方薬としての蜂の子も、多くの場合、この耳鳴り症状を改善する効果を狙って使用されています。
ルーマニアでも、蜂の子は健康食品とされています。ルーマニアではアピセラピーと呼ばれるミツバチを利用した病気などの治療が行われており、蜂の子もミツバチ産品のひとつとして利用されています。

蜂の子の成分

蜂の子は、薬として利用されていたことからも分かる通り、身体の健康に役立つ成分が豊富です。蜂の子には、19種類のアミノ酸、8種類のビタミン、8種類のミネラル、8種類の脂肪酸が含まれています。

アミノ酸が豊富でバランスが良い

蜂の子は古くから貴重なタンパク源として珍重されており、タンパク質を構成するアミノ酸が豊富です。人体を構成するアミノ酸のうち、人が身体で生成できず食品から摂取する必要のあるアミノ酸を必須アミノ酸といいます。蜂の子には、9種類ある必須アミノ酸のすべてが含まれています。
必須アミノ酸は一種類だけ大量に摂取しても有効利用されず、バランス良く摂取することが重要です。必須アミノ酸がすべて含まれている蜂の子は、必須アミノ酸を有効利用できるとても優れた食品です。

健康や美容に役立つビタミンが含まれている

蜂の子には、ビタミンCやビタミンB群が含まれています。
ビタミンCは様々な健康効果があることで有名です。増えすぎると細胞を老化させる活性酸素を中和する働きや、免疫力を高める効果があります。肌にハリを与えるコラーゲンの生成を促す働きや美白効果もあるため、美しい肌をつくるのにも役立ちます。
ビタミンB群は「代謝ビタミン」と呼ばれ、糖・脂質・タンパク質をエネルギーに変換するのに不可欠です。ビタミンB群が不足すると、栄養素がうまく代謝されず、血糖値や血液中の悪玉コレステロール値が上がり、肥満や生活習慣病の原因になります。

身体の機能に必須のミネラルが豊富

蜂の子には、カリウム・亜鉛・鉄・銅・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。これらのミネラルは生命活動に不可欠な酵素の材料になり、身体の健康維持に欠かせません。鉄は血液を構成する赤血球の生成にも必須です。カルシウムやマグネシウムは骨や歯の材料としても重要な栄養素です。

脂肪酸は悪玉コレステロール値を下げるオレイン酸が中心

蜂の子には、8種類の脂肪酸が含まれています。脂肪酸は身体の重要なエネルギー源であり、細胞膜の主要な構成成分です。
蜂の子に含まれる脂肪酸のうち、最も割合の大きいものがオレイン酸で、全体の半分近くを占めます。オレイン酸はオリーブオイルやアーモンドなどに多く含まれることで有名で、血液中の悪玉コレステロール値を下げる効果があり、生活習慣病の予防に役立ちます。蜂の子には健康に役立つ良質な脂肪酸が含まれています。

蜂の子の健康効果

蜂の子には身体の健康に役立つ栄養素が豊富で、滋養強壮に効果的です。蜂の子の健康効果には以下のようなものが挙げられます。

  • 耳鳴りの予防・改善
  • めまい症状の改善
  • 筋肉の増加
  • 生活習慣病の予防
  • 免疫力の向上
  • 代謝機能の向上
  • 血行促進
  • ストレス軽減
  • 質の良い睡眠を促す
  • 貧血の予防・改善
  • 認知症の予防
  • 美肌効果
  • 薄毛や白髪の予防
  • 更年期障害の症状改善
  • 男性機能の向上
  • うつ病の予防・改善

蜂の子には多くの健康増進効果があるため、サプリメントの材料としても利用されています。美容効果のある成分も含まれていることから、蜂の子を使った美容液やクリームなどの美容用品も販売されています。

蜂の子が食べられている地域

明治・大正時代には一般的な食材として蜂の子が全国的に食べられていたことが、当時の調査によって確認されています。日本人の食生活の変化により、蜂の子の食習慣をもつ地域は減少しましたが、蜂の子の産地である山間部を中心にこうした食文化は根強く残っています。
現在の日本で蜂の子が食べられている地域としては、長野県・岐阜県・愛知県・山梨県・静岡県・栃木県・岡山県・宮崎県・熊本県などの山間部が知られています。

蜂の子の採取

蜂の子として最も多く食べられているのはクロスズメバチの子供です。クロスズメバチの巣は地面の下に作られるため、蜂の子の採取には、まず巣を見つけ出す必要があります。
巣の発見には、蜂の移動経路などを注意深く観察する方法と、蜂に目印を付けたエサを持たせて巣に運ぶのを追跡する方法があります。後者の場合、目印には綿やビニール片が使われ、生肉などでおびき寄せた蜂にエサを持たせて追跡します。
巣を発見したら、煙幕などを使って巣を燻します。蜂は煙によって仮死状態になるので、この間に蜂の巣を掘り起こして採取します。
蜂の巣の採取はとても危険です。蜂に刺されるとアレルギー反応が起こり、死に至ることもあります。素人は決して巣に近づいてはいけません。蜂の子を購入するために産地に行く場合でも、刺されないよう注意が必要です。

蜂の子の食べ方

蜂の子の調理法としては、佃煮が最もポピュラーで、瓶詰や缶詰にされたものが流通しています。岐阜県や静岡県などでは、クロスズメバチの蜂の子を「へぼ」と呼び、炊き込みご飯にして食べる習慣があります。このほか、バター炒めや唐揚げ、甘露煮なども一般的な調理法です。
蜂の子に含まれる栄養素が注目され、蜂の子を使ったサプリメントも数多く販売されています。幼虫の見た目から蜂の子を食べるのに抵抗がある場合は、サプリメントで蜂の子成分を摂取するのもひとつの方法です。

まとめ

蜂の子は蜂の幼虫やサナギのことで、古くから貴重な食料や薬として人の生活に深く関わってきました。蜂の子には健康に役立つ栄養素が豊富に含まれ、多くの滋養強壮効果があります。丈夫な身体をつくって健康的な毎日を送るために、そして伝統的な昆虫食の食文化を体験する意味でも、いちど蜂の子を食べてみることをお勧めします。

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