蜂の子はとても安全で優秀な昆虫食である!
蜂の子などの昆虫食を不安に思う人もいます。しかし、実際の昆虫食はとても安全で栄養価に優れているのです。
また、多くのメリットを持つのが、昆虫食です。
ここでは、蜂の子などの昆虫食について、安全性やメリット、世界の状況などを詳しく解説しています。
昆虫食の現状と安全性
蜂の子などを食べる「昆虫食」は日本のみならず、世界中にある習慣です。
また、蜂の毒などに不安を覚える人もいますが、蜂の毒は加熱処理することで分解されてしまうため、口にしても問題はないのです。
そのため、昆虫食を危険なことと思う必要はありません。むしろ世界中の人々が貴重なたんぱく源として昆虫を食べている現状を理解しておくべきなのです。
日本の昆虫食と安全性
日本の昆虫食では「イナゴ」が最も広い範囲で食されています。事実、ほぼ日本全国でイナゴを食べる習慣が残っています。
また、カイコも広い範囲で食されていて、北海道、東北の一部を除き、ほとんどの地域で食べられています。
あとは蜂の子、ザザムシなどが中部地方と九州の北部を中心に食されています。
一方で、蜂の子などは「毒」を不安視する人がいます。しかし、蜂の毒は加熱によって性質が変化してしまいます。つまり、加熱処理すれば、安全に食べられるのです。
実際に缶詰の蜂の子は、文部科学省が「日本食品標準成分表」の中で肉類として取り上げています。これは文部科学省及び政府が蜂の子の缶詰は安全であることを認めた証なのです。要するに、流通している蜂の子の缶詰などは国が認めていて安全性に担保があるため、必要以上に不安視するべきではないのです。
ただし、カニなどの甲殻類にアレルギーがある場合は、昆虫でも同様の症状が引き起こされるおそれがあります。甲殻類にアレルギーがある場合には、昆虫食を行わないほうが良いでしょう。
世界の昆虫食
世界に目を向けてみると、世界のほとんどの地域で昆虫食が行われています。
ただし、昆虫が少ないヨーロッパでは昆虫食が盛んではなく、バッタなどを食べたという記録が残っている程度です。
また、アフリカ、東南アジア、オセアニアなど、ほとんどの地域で先住民族の時代から昆虫を食べる習慣が根付いています。
アフリカのように広大な自然が残る地域では、昆虫を缶詰にして料理に使うという習慣までも存在しています。
昆虫の安全性に関する国連の提言
昆虫食の安全性について、国際連合食糧農業機関(FAO)は昆虫食によって寄生虫や病気が人に感染した事例はないと報告しています。つまり、一般的な食材と同様の衛生環境で昆虫を扱う限りは安全であるとしています。
その一方で、昆虫がアレルギーを引き起こすおそれはあると注意を促しています。さらに、家畜から人への感染症のように昆虫食で寄生虫や病気が感染する可能性は低いとしながらも、継続的な調査が必要であることは認めています。
このことから、昆虫食が絶対に安全であるとは言えないまでも、管理された衛生環境で取り扱われる昆虫については問題ないということが分かります。つまり、日本国内で流通している蜂の子の缶詰やイナゴの佃煮などを食べる分には、世界的な視点でも寄生虫や病気に感染する危険性はないことが分かります。
昆虫食のメリット・デメリット
昆虫食には多くのメリットがあります。しかし、デメリットがない訳でもありません。昆虫食のメリットとデメリットを比較したうえで、メリットを取り入れることが重要です。
昆虫食のメリット
昆虫食の大きなメリットは昆虫のたんぱく質の含有量が多いことです。昆虫のたんぱく質の割合は肉類と比較しても劣っていません。
例えば、食用昆虫のたんぱく質の割合(乾燥重量に対する%)は次のようになっています。
- 乾燥ビーフ:81.1%
- 乾燥ポーク:23.01%
- 乾燥チキン:73.21%
- イナゴ :68.1%
- サバクトビバッタ:51.5%
このように、たんぱく質の摂取をする際に肉類の代わりとなるのが昆虫食なのです。
また、昆虫はコレステロールを作る能力がありません。このことから、昆虫はとてもコレステロール値が低いのです。一方で、ミネラルやビタミンは豊富なため、健康面でも良い食料と専門家は指摘しています。
例えば、農学者で東京農業大学名誉教授の三橋淳氏は、昆虫食の栄養価について、国内で食べられているカイコのさなぎ3匹で鶏の卵1つに相当すると説明したことがあります。
さらに、FAOは次のようなメリットも挙げています。
- 昆虫は生産効率が良い。
- 伝統的な薬として使える。
- 生産の際に温室効果ガスの排出量が少ない。
- 原野で確保すれば、貧困層でも販売が可能。
- 家畜よりも必要な水が少ない。
- 畜産よりも狭い土地でも生産が可能。
このようなメリットを挙げて、世界の昆虫食を保護・推進しています。
デメリット
昆虫食にはメリットが多くありますが、デメリットもあります。
最も大きなデメリットは昆虫養殖に取り組む企業・団体が少ないことです。要するに、昆虫の供給量が不足しているのです。
現時点では、原野で採取した昆虫を加工した食品も多く、昆虫の養殖は始まったばかりです。そのため、昆虫食の普及に時間がかかるというデメリットがあります。
日本で広く食されている蜂の子やイナゴでも本格的な養殖に取り組む企業や団体は多くありません。養殖された昆虫でなければ、衛生上の問題がクリアできないため、養殖に取り組む企業が現れることが昆虫食を普及させるカギになるのです。
また、昆虫の養殖に必要なコストも問題です。機械化などによってコストダウンが進めば、従来の手法では食材としても家畜の飼料としても競争することが難しくなります。
このようなことから、食用昆虫の安定供給につながらないことが昆虫食のデメリットなのです。
FAOが提言する昆虫食の注意点
FAOは昆虫食や昆虫の養殖について、次のようなことを提言しています。
- 昆虫の生息地を保護する場合、地域住民の昆虫食に配慮する。
- 昆虫の保護地域でも、地域住民の持続的な昆虫の採取を規制しない。
- 昆虫保護の観点から収穫量の監視体制を整える。
- 外来種を自然に放さない。
- 可能な限りは養殖、半養殖を行う。
このような提言をしています。
食べられている昆虫の種類
日本の昆虫食は蜂の子やイナゴが有名ですが、世界では1,900種類以上の昆虫が食べられています。
そのため、日本でも食べられていないだけで、実際には食べることができる昆虫はいるのです
日本で食べられている昆虫
日本で広く食されているのは、次の昆虫です。併記は食べられている地方です。
- イナゴ:ほぼ日本全国
- カイコ:福島、新潟、宮城より南の地域
- 蜂の子:中部地方、近畿・中国・四国・九州の一部
- トビゲラの幼虫(ザザムシ):中部地方、近畿・北部九州の一部
このほか、カミキリムシ、トンボ、コオロギなどが、食材や薬として活用されている地域があります。
昆虫食は長野県が最も多く、様々な用途で活用されています。
これは積雪が多いという地理的な条件が大きく影響しており、冬場の貴重なたんぱく源として昆虫を食べていたことが原点と考えられています。
世界で食べられている昆虫
FAOの調査によると、世界では1,900種類以上の昆虫が食用にされています。
多くは原野から採取されていますが、食用にされている正確な量は未だに把握されていません。
世界で食用にされているのは次の昆虫です。
- 甲虫類(コガネムシ目):31%
- イモムシ・毛虫類(チョウ目):18%
- ハチ(アリ目):14%
- バッタ類(バッタ目):13%
- セミ(カメムシ目):10%
- シロアリ(シロアリ目):3%
- トンボ(トンボ目):3%
- ハエ(ハエ目):2%
- その他の昆虫類:5%
日本人の感覚では食べるのが敬遠されるような昆虫もいますが、世界では普通に食べられています。
しかも、採取して食べられているだけではなく、市場や露店で肉や魚に並んで昆虫が販売されているのも事実です。
日本よりも大きなマーケットがあることは間違いなく、多くの専門家が日本でも需要が高まると示唆しているのです。