蜂の子とはどのような物か?
蜂の子が耳鳴りに効くという岐阜大学の論文が発表されて以来、蜂の子は高い人気を集めています。そんな蜂の子の栄養価や効果、摂食方法はどのようになっているのでしょうか?
ここでは、蜂の子がどのような物か、詳しく解説しています。
蜂の子とは
蜂の子は、文字通りに「蜂の子ども」です。成虫になっていなければ蜂の子どもなので、さなぎも幼虫も蜂の子と呼ばれます。
蜂の種類
蜂の子には様々な種類の蜂が使われます。具体的にはスズメバチ、ミツバチ、アシナガバチ、クマバチなど、蜂という単語から想像できる種類のほとんどが蜂の子に使われています。蜂の子はそのまま缶詰や瓶詰にして販売されている物もあります。また、蜂の子サプリメントもあり、個人の好みで選べるようになっています。
蜂の子サプリメントにオスが使われる理由
蜂の子サプリメントに使われるのは栄養価に優れている「オス」とされています。しかし、実際にはメスの蜂がサプリメントに使われていることもあります。
オスの蜂はメスと比較すると非常に少ないのです。オスの蜂の割合は、ミツバチやスズメバチで5~10%、アシナガバチでは1%ほどしかいません。その一方で、オスの蜂は繁殖のために存在していて、メスの蜂と比較すると生育期間や与えられる栄養に大きな差があります。オスの蜂のほうが、花粉やローヤルゼリーを多く与えられて長い生育期間を経て成長します。その結果、栄養価に大きな差が生まれます。
つまり、繁殖に使われる分の栄養を長く与えられるオスの蜂のほうが、蜂の子としても栄養価に優れているのです。
栄養素の含有量
蜂の子の栄養価を紹介します。
公平な視点で成分を紹介するために、文部科学省が発表する「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」を用います。
可食部100gあたりの成分(蜂の子缶詰) | 含有量 | |
---|---|---|
エネルギー | 250kcal | |
たんぱく質 | 16.2g | |
脂質 | 7.2g | |
炭水化物 | 30.2g | |
ビタミンA | β-カロテン | 500µg |
レチノール活性当量 | 42µgRAE | |
ビタミンE | トコフェロールα | 1.0mg |
トコフェロールβ | 0mg | |
トコフェロールγ | 0.8mg | |
トコフェロールδ | 0.2mg | |
ビタミンK | 4µg | |
ビタミンB群 | ビタミンB1 | 0.17mg |
ビタミンB2 | 1.22mg | |
ナイアシン | 3.8mg | |
ビタミンB6 | 0.04mg | |
ビタミンB12 | 0.1µg | |
葉酸 | 28µg | |
パントテン酸 | 0.52mg | |
ミネラル | ナトリウム | 680mg |
カリウム | 110mg | |
カルシウム | 11mg | |
マグネシウム | 24mg | |
リン | 110mg | |
鉄 | 3.0mg | |
亜鉛 | 1.7mg | |
銅 | 0.36mg | |
マンガン | 0.76mg | |
食塩相当量 | 1.7g |
成分表には含まれていませんが、蜂の子には「9種類の必須アミノ酸」が含まれます。必須アミノ酸は体内で合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。
肉類などに多く含まれる必須アミノ酸ですが、肉類は加熱調理する過程で必須アミノ酸の吸収効率を下げてしまいます。一方で、蜂の子は生で食べることもできますし、サプリメントであれば加熱による吸収効率の低下を気にする必要がなくなります。
身近な食材の栄養価との比較
蜂の子の栄養価だけでは分かりにくいので、普段の食事で食べる機会が多い牛肉、豚肉、鶏肉の栄養成分と比較した表を紹介します。
可食部100gあたりの成分 | 蜂の子(缶詰) | 牛肉(和牛肉、かたロース) | 豚肉(中型種肉、ロース) | 鶏肉(若鶏肉、もも) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
エネルギー | 250kcal | 411kcal | 291kcal | 204kcal | ||
たんぱく質 | 16.2g | 13.8g | 18.3g | 16.6g | ||
脂質 | 7.2g | 37.4g | 22.6g | 14.2g | ||
炭水化物 | 30.2g | 0.2g | 0.2g | 0 | ||
ビタミンA | β-カロテン | 500µg | 1µg | 0 | ― | |
レチノール活性当量 | 42µgRAE | 3µgRAE | 6µgRAE | 40µgRAE | ||
ビタミンE | トコフェロールα | 1.0mg | 0.5mg | 0.3mg | 0.7mg | |
トコフェロールβ | 0mg | 0 | 0 | 0 | ||
トコフェロールγ | 0.8mg | Tr | Tr | 0.1mg | ||
トコフェロールδ | 0.2mg | 0 | 0 | 0 | ||
ビタミンK | 4µg | 8µg | 2µg | 29µg | ||
ビタミンB群 | ビタミンB1 | 0.17mg | 0.06mg | 0.77mg | 0.1mg | |
ビタミンB2 | 1.22mg | 0.17mg | 0.13mg | 0.15mg | ||
ナイアシン | 3.8mg | 3.2mg | 7.1mg | 4.8mg | ||
ビタミンB6 | 0.04mg | 0.18mg | 0.35mg | 0.25mg | ||
ビタミンB12 | 0.1µg | 1.1µg | 0.3µg | 0.3µg | ||
葉酸 | 28µg | 6µg | 1µg | 13µg | ||
パントテン酸 | 0.52mg | 0.9mg | 0.66mg | 0.81mg | ||
ミネラル | ナトリウム | 680mg | 42mg | 39mg | 62mg | |
カリウム | 110mg | 210mg | 310mg | 290mg | ||
カルシウム | 11mg | 3mg | 3mg | 5mg | ||
マグネシウム | 24mg | 14mg | 20mg | 21mg | ||
リン | 110mg | 120mg | 170mg | 170mg | ||
鉄 | 3.0mg | 0.7mg | 0.3mg | 0.6mg | ||
亜鉛 | 1.7mg | 4.6mg | 1.6mg | 1.6mg | ||
銅 | 0.36mg | 0.06mg | 0.05mg | 0.04mg | ||
マンガン | 0.76mg | 0.01mg | 0.01mg | 0.01mg | ||
食塩相当量 | 1.7g | 0.1g | 0.1g | 0.2g |
蜂の子は昔から「たんぱく源」として食べられていました。そのことを裏づけるように、肉類に劣らないたんぱく質を含んでいます。
また、緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンを含むことから、体内でビタミンAとして機能する量を表す「レチノール活性当量」が肉類よりも優れています。
さらに肉類と蜂の子の栄養成分を比較すると、蜂の子のほうがバランス良く栄養素が含まれていることが分かります。
つまり、蜂の子は栄養に偏りのある食生活を補うために適した食材なのです。
蜂の子の活用方法
蜂の子はそのまま缶詰や瓶詰にした物も販売されていますが、昆虫を食べることに抵抗がある人もいるため、蜂の子サプリメントという形でも販売されています。
また、漢方薬の世界でも蜂の子は重宝されていて、古くから「薬」として蜂の子が使われていました。
蜂の子のサプリメントは多数の種類が販売されています。しかし、カプセルに入っているため、蜂の幼虫やさなぎの姿を見る必要はありません。ほかのサプリメントや薬と同じように飲むことができます。また、サプリメントは栄養成分のバラつきがなく、手軽に入手できるというメリットもあります。
蜂の子は漢方薬としても使われています。粉末状にした蜂の子はとても高価な漢方薬に分類されます。その価値は、中国で最も古いとされる薬学書の「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」で、最上位である上薬(じょうやく)に分類されていることでも窺い知れるでしょう。
漢方薬としての蜂の子は、自律神経を整える効果や滋養強壮の効果があるとして処方されています。自律神経を整える効果は、耳鳴り、めまい、難聴などを改善する効果につながるため、メニエール病を始めとした「耳に関する症状がある人」などに処方されるのです。
蜂の子は日本以外にも、メキシコやタイ、中国などの多くの国で食べられています。そして、中国の漢方薬のように薬としても活用されています。
昆虫を食べる「昆虫食」は国際連合食糧農業機関(FAO)も推奨しています。また、FAOは昆虫食をたんぱく源というだけではなく、伝統的な薬の一種として認めているのです。そのうえで、昆虫食を保護する取り組みが行われています。
つまり、蜂の子が健康食品に用いられることは、世界的な視点では当たり前のことなのです。
蜂の子の効果
蜂の子は栄養価が高く、漢方薬の世界では耳への効果がある薬として使われています。
また、専門家は蜂の子の栄養価から次の効果があると指摘します。
蜂の子は、自律神経を整えることで耳鳴りなどを改善する効果がある漢方薬として使われています。この効果は、岐阜大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科の研究チームが発表した論文で裏づけられています。
論文では、耳鳴りの症状がある人に酵素分解された蜂の子を12週間投与したところ、コルチゾールの数値の低下や症状の改善が確認されたと報告されています。コルチゾールはストレスを感じたときに分泌されるホルモンで、そのホルモンは耳の中にある受容体で感知しています。つまり、耳鳴りの原因の一つがストレスによるコルチゾールの増加なのです。
研究ではコルチゾールの数値が低下して症状が改善したと報告されているため、蜂の子が耳鳴りなどに効果があることが裏づけられました。
蜂の子には滋養強壮の効果があることは、蜂の子の漢方薬の使用方法でも明らかです。また、蜂の子にはたんぱく質が豊富に含まれています。たんぱく質は人間の活動エネルギーになることから、滋養強壮の効果となるのです。
蜂の子には多くのビタミンが含まれています。
例えば、ビタミンB6は免疫機能の根幹である抗体を作るために欠かせない成分です。ほかにも、ミネラルの亜鉛も免疫細胞(白血球)の機能を高める効果を持っています。
要するに、これらの成分が多く含まれる蜂の子は免疫力を高める効果を持つのです。
蜂の子には滋養強壮の効果があり、体力を維持することができます。また、ビタミンやミネラルを豊富に摂取できるので、細胞の老化を促進する活性酸素を排除することもできます。体の機能を高めるために必要な栄養素も補えます。そして、免疫力も高められるため、病気による体の老化を予防できます。
一方で、細胞のサイクル機能を維持するビタミンやミネラルも補給できます。肌のターンオーバー、髪の毛のサイクルなどの見た目を若々しくするためにも効果的です。